2017-08-21

「日本史の悪役」から学ぶナリワイ人の生き方【第1回】石田三成(後編)

平和を維持するには、財政管理である。言い換えれば、1円の使途不明金すらも許さない心構えを持った人間が求められるということだ。

古今東西、「豪傑」と呼ばれる人間は金遣いが荒い。やることがドンブリ勘定である。もちろん、それでは困る。1円単位できっちり会計を報告してくれないのなら、クビにするしかない。

石田三成は、それらの理屈を完璧に知っていた。【前編】から文言を繰り返すが、天下を平定したあとの平和を維持する上で彼のような人材は絶対に欠かせない。

なのに、後世の人々は三成を散々にこき下ろした。

 

三成と清正

誤解を恐れずに言うと、世の中は銭ゲバが勝利を収める。

ただし、ここで言う「銭ゲバ」とはインもアウトもしっかり管理できる者だけを指す。大金を稼ぐ能力はあるけれど、同時に浪費癖のある人間はどこかで必ず失敗する。一度膨らんだ支出をセーブすることができない、ということだからだ。

逆に極度の吝嗇(りんしょく)なのに、まとまったカネを稼ぐ手段を知らない人間も問題だ。そういうタイプは結局ジリ貧に追い込まれる。「ロースコアの危険性」に鈍感な人というのは、案外多く存在する。

要するに、収入と支出の両方に気を遣うことができないと世間では苦労するということだ。

ところが、それを理解できる人材が相対的に少ないのも事実。三成と決定的に仲の悪かった加藤清正・福島正則は典型的な豪傑タイプで、会計官僚の考え方をどうしても理解できない。だから頻繁に衝突する。

しかも、加藤清正は江戸期に「英雄」と化した。病気治癒の神様として、地元熊本はおろか江戸の庶民にまで「清正公の手形」というものが流行ったほど。となると、清正と対峙していた三成が余計に悪役扱いされる。

明治に入ってからも三成の評価が改善されなかったのは、恐らくこの影響もあると筆者は考えている。

 

経理の達人

「この世はカネで動く」という言葉は、確かに事実だ。

ただし、それにはものすごく過酷な節制をしなければならない。先述したように、本当にカネの力で世の中を動かそうと思うならインもアウトも徹底管理する必要がある。使途不明金は以ての外、1円の増収があれば同時に1円の支出削減を実行して2円の純利益を上げるという心構えが要求される。

これはもちろん、個人事業主にも当てはまることだ。やってみれば分かるけれど、個人事業主って会計管理が結構大変。筆者も会計分野の作業が苦手だ。だって、昔から算数できなかったもの。

だから、石田三成みたいな配下が欲しいと心の底から考えている。いや、マジで。もし彼が澤田オフィスの会計担当だったら、毎年2月の確定申告なんか苦にならないはずだ。

ただその代わり、使途不明金が発生したらものすごい形相で問い詰められるだろうと覚悟している。結局、三成はそういう性格の男だったんじゃないだろうか。

 

徳川幕府に受け継がれる

日本史の特徴として、「会計分野に詳しかった人物は悪役にされやすい」というものがある。

結局これは、徳川家康が政権運営のために導入した朱子学というイデオロギーが影響しているわけだが、逆に「日本史上の悪役」を勉強するとカネの扱い方について学べるということが多々ある。

おまけに、朱子学を国学にした張本人の家康ですら、実際は「カネのプロ」だった。2世紀半の長きに渡り繁栄した徳川幕府は、徹底的な会計管理でその基盤を築いていく。

平たく言えば、三成が開発したやり方をそのまま模倣したわけだ。

逆に言えば、三成がいなかったら徳川幕府はあれだけ盤石な体制にならなかったかもしれないということである。

《完》

▶︎前編はこちら

澤田真一(さわだ・まさかず)

1984年10月11日生。経済、テクノロジー関連メディアなどで執筆を請け負う。

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